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遺言について その5「死因贈与契約」

死因贈与契約とは

 死因贈与契約とは、「俺が死んだら、この土地はお前にやるよ」と約束した場合のように、贈与者が死亡することで、効力が発生する契約のことを言います。
 一見すると、遺贈によく似ていますので、遺贈に関する規定が準用されます。

遺言との違い

 遺言と良く似ている死因贈与ですが、遺言が決められた方式で書かれなければいけないのに対し、死因贈与は契約ですので、好きな方式で行うことができます。
極端に言えば、口約束でも可能なわけです。
 また遺言が一方的になされるのに対し、死因贈与契約が双方の合意のもとなされるのも違いです。
 相違点を下にあげると、  

□ 契約の一種なので方式は自由(書面によらない死因贈与も有効)

□ 未成年が死因贈与契約を結ぶには親権者の同意または代理が必要

□ 相続の承認・放棄が認められない

□ 書面によらない死因贈与はいつでも撤回できる

 遺言者がどれだけ財産を渡したいと思っても、その財産を受けるかどうかは受贈者次第です。
しかし、死因贈与契約は契約であるが故に、相続の承認・放棄ができません。したがって確実に意思を実現したい場合に非常に有効な手段といえます。

死因贈与契約の特徴

□ 負担付死因贈与契約
    負担付死因贈与契約の負担付とは、「生活の面倒を見たら」とか「介護をしてくれた者に」といったように受贈者に
  一定の法律上の義務を負担させることです。
    死因贈与契約が遺贈の規定を準用されることから、贈与者の自由な撤回が認められると考えられています。
  しかし、負担付死因贈与契約の場合、負担の全部または一部が履行された場合(生活の面倒をみた場合など)には
  原則死因贈与契約の取り消しは認められません
   それ故、面倒を見ている相続人からすれば、財産を譲られることが担保されているので安心感があります。
   財産を譲る代わりに生活の面倒を見て貰うといった条件をつけるのであれば、
    遺言よりも効果的と言えるかもしれません。              

□ 死因贈与契約執行者
    死因贈与契約も遺言と同じく執行者を定めておくと手続きがスムーズに出来ます。
   執行者を定めなかった場合、本登記をする際に、相続人全員に履行を求める必要があり、トラブルが予想されます。
    遺言執行人がいる場合でも、遺言執行人は死因贈与契約の執行は出来ないとされています。
    ですから死因贈与契約の場合には死因贈与契約執行者を別途定める必要があります。
   

□ 始期付所有権移転仮登記
    死因贈与契約の利点の一つに始期付所有権移転仮登記ができることがあげられます。
   始期付所有権移転仮登記とは、「いずれこの不動産は自分のものになるとアピールするようなこと」と考えて下さい。
   この仮登記をすることによって、当該不動産が勝手に処分されるのを防いだりすることが期待できます。
    尚、この仮登記をする際に、公正証書の正本または謄本があれば、受贈者(不動産を貰う人)単独で申請することができます。
   したがって死因贈与契約を結ぶ時は、公正証書にするのが一般的です。

 □ 仮登記までした死因贈与を撤回する場合
    仮登記をした死因贈与を撤回する場合は注意が必要です。
    死因贈与契約を撤回するのは自由ですが、仮登記を抹消するには仮登記名義人の同意が必要です。
    仮登記までした場合、死因贈与契約の受贈者は、当然その不動産を取得できるとの期待があります。
    そこで「死因贈与契約を撤回するので、仮登記を抹消するのに協力してくれ」と言われても、簡単に応じるとは
    考えにくいのが現状です。
    安易な気持ちで死因贈与契約で仮登記をするのは避けましょう。

 □ 死因贈与の目的の不動産が売却された場合
    もし死因贈与契約の目的の不動産が贈与者によって売却された場合はどうなるのか。
    死因贈与契約の目的物がない場合は、贈与をすることは不可能ですから、その死因贈与契約は
    取り消されたと考えられます。
    普通の死因贈与契約ならば、遺言と同様に撤回するのは自由です。ただ負担付死因贈与契約の負担部分が
    履行された場合は、死因贈与契約の取り消しは認められません。
    取り消しが認められない死因贈与契約の目的物が売却された場合はどうなるのでしょうか。
    そのものズバリの判例は確認できませんが、その場合は受贈者と買主の対抗関係になると思われます。
    

登録免許税に注意!!

 死因贈与契約では、不動産の登録免許税で、通常の相続登記と比べて大きな差があります。

 □ 相続・遺贈 固定資産税評価額×1000分の4
    固定資産税課税台帳の評価額1000万円の土地を相続した場合、
    計算例)
    1000万×1000分の4=4万で、4万円が登録免許税となります。
    尚、この場合の遺贈は相続人に対するものです。第三者に対する遺贈は1000分の20の計算になります。

 □ 死因贈与契約  固定資産税評価額×1000分の20
    仮登記に1000分の10、本登記に1000分の10かかります。
    仮登記をせずに直接本登記する場合は1000分の20です。
    固定資産税課税台帳の評価額 1000万の土地を目的物に、死因贈与契約を結んだ場合、
    計算例
    仮登記 1000万×1000分の10=10万
    
    本登記 1000万×1000分の10=10万     合計20万


  上記を比較して見ると、遺言と死因贈与契約では、登録免許税の負担が大きく違い、 また仮登記と本登記の際に司法書士に依頼することを考えると費用面では遺言の方が優れていると言えるでしょう。



    遺言と死因贈与契約のどちらが良いかは一概には言えません。それぞれ良い点、悪い点があります。
    当事務所では、お客様の置かれている状況や、受贈者の立場等も考慮して、アドバイスいたします。
   まずはお気軽にお尋ねください。

         ※仮登記、本登記は行政書士が行うことはできません。必要に応じて当事務所と提携している司法書士を紹介します。  

死因贈与契約と遺言の優劣

 死因贈与契約と遺言がなされた場合、どちらが優先するのか。
もし死因贈与契約ではAに死後土地が贈与されるとあり、遺言ではBに土地を遺贈すると書いてあった場合のケースで考えてみましょう。
死因贈与契約は遺贈の規定を準用することから、内容が矛盾する死因贈与契約と遺言の優劣も日付の前後によると考えられます。
 従って、もし死因贈与契約よりも遺言があたらしくなされた場合、遺言の方が優先されます。

 但し、負担付死因贈与契約の場合は、負担部分が履行されると新たに遺言をしても撤回とはなりませんので注意が必要です。

無効な自筆証書遺言が死因贈与契約として認められる場合がある

   自筆証書遺言の方式を無視した場合、その遺言は効力を発揮しません。
ですが、一定の場合に自筆証書遺言とは認められなくても死因贈与契約と認められることがあります。
 実際に、死因贈与契約と認められるかは、個別の案件ごとに判断していくしかないのですが、
概ね以下の条件を満たしていることが必要だと考えらます。

□ 遺言者が、受遺者に対して財産を遺贈しようとする意志があること

□ 受贈者が、自分に対して遺贈される予定を知っていて承諾したと認められること


 承諾したと認められるかについては、ハッキリと返事をする場合だけでなく、遺贈されると知っていながら特に異議をとどめない場合も含まれると考えられます。
 死因贈与契約は契約ですので、

贈与者が申込をし、受贈者が承諾をする必要がある

からです。
 ですから、遺言の存在・内容も知らず、生前に遺言者から財産の処分について打診も受けていないような場合には死因贈与契約と解することは難しいと言わざるを得ません。

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